アマチュアとレア曲

鑑賞記を書こうとして、横道にそれてしまったので、記事再編しました。
鑑賞記として書き起こすまでいったん下書きに保存(すみません)。

せっかく書いた横道のほうを、こちらに別記事として。

ピアノ曲いろいろ

この世の中に存在するピアノ曲を全部弾いたことのあるピアニスト(アマチュアはもちろん、ピアニストだって・・・)なんてまず存在しないと思う。

ちょっとレア曲ってものについて考えてみた。

定番曲だけでお腹いっぱい

超有名曲。誰もが知っているような曲というのがあります。

「ノクターン」(ショパンのop.9-2のこと)、「プレリュード」(バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番C-durのプレリュードのこと)、「悲愴」(ベートーヴェンのピアノソナタ第8番Op.13”悲愴”の第2楽章)・・・などなど。

ピアニストのリサイタルでメインになるような曲で、ピアノ愛好者も手を出す曲も多彩です。

バロックから近現代まで、小品集から超大曲まで、枚挙にいとまがない。

世の中のピアノ弾きは、普通、定番曲だけでも大忙しです。
ピアニストならば、収益性を考えれば、集客力のあるプログラムになるでしょうし、その中にこだわりの曲をまぜていくのがひとつのパターンのようです。

アマチュアは、趣味なので、好きな曲を弾きます。当然、耳なじみのある定番曲が人気があります。いろんなところで耳にした曲を「これ弾いてみたい!」と思う気持ちが原動力。そうすると、技術的にも時間的にも何かと制約の多いアマチュアは、「弾いてみたい曲」を、それら制約とのバランスで選曲していきます。すると、「弾いてみたい曲」(定番曲中心)をさしおいてまで「レア曲」を発掘するエネルギーはないものです。

だから、どうしても定番曲のウェイトが高い(レア曲はレア曲のまま)という状況が続くのですね。

レア曲を弾くとき(アマチュアの場合)

そんな状況の中、アマチュアでも「わざわざ」レア曲を弾くケースというのはあります。
私自身も1月に参加した「邦人曲シバリの会」というのは、ほとんどが馴染みのない曲でした。そういう趣旨の会だから、レア曲祭りになるのは自然な流れです。

ですが、そういう機会もまた「レア」ではあります。

一般的な弾き合い会や演奏会で、アマチュアが「わざわざ」レア曲を弾くメリット/デメリットをトレードオフした場合、どうでしょう?

●少人数の弾き合い会の場合

少人数の弾き合い会ならば、2~3時間という比較的短時間の中で、持ち時間制ということもあり、お互い様な部分が多々あるので、何でもいいと思ってます。

事前にプログラム提出をしないことも多く、演奏順もその場で決めることも普通にありますから。

●公開の演奏会の場合

この場合は、あえてレア曲を弾くメリットは少ないようです。

定番曲であれば、聴衆もその曲を弾いたことがあったり、今後弾く予定で譜読みをしている人も多かったりで・・・聴衆に受け入れ準備が整っています。なので、大なり小なりの傷があっても、聴衆の耳は補正して聴いてくれます。優しいです。

ところが、レア曲は聴衆にその受け入れ準備が整っていません。演奏時間枠だけは目安としてわかっていることが多いので、だいたい何分くらいの曲なのかという予測はできます。プログラムに曲目解説が書かれてあれば良いほうです。

演奏者多数の演奏会の場合、ちゃんと聴いてもらいたいと思えば、聴衆の興味のある曲のほうがいいです。特に長丁場の演奏会(私が経験した中では最長8時間というものも!)で演奏者が多いと、聴衆の立場でそれらすべてを集中力を持って聴くことはほぼ無理です。「これは絶対聴きたいな」と思う演目をピックアップして、その日の行動(何時に会場に行って、どこの部分を聴いて、どこで中座するか)を決めますから。
「へ~、知らないや」で、中座タイミングに選ばれてしまうリスクもあるということです。

アマチュア界隈でも、コンクール全国組レベルになれば、知名度も実績もできるので「あの人の演奏はぜひとも聴きたい」となります。レア曲を演奏会で弾くのは自分がそういう立場になってからでも遅くないと思います。

●レア曲を人前で弾くなら

やはり、その曲のどこかに琴線に触れる部分があったから、弾いてみたいという衝動に駆られるのだと思う。

弾くというのは、時間を消費する活動なので、単にその曲を弾くために消費するというだけでなく、その曲を弾くために別の曲を弾く機会を失うことでもあるのです。そして時間というのは有限のリソースなのです。(あたりまえ)

そして、聴衆の時間をも消費させる。

であるからには、その曲の魅力を「正しく」聴衆に伝えられる技術がMUST要件になると思う。

それができないうちは、人前に出してはいけないのがレア曲なんだと思う。

家でひとりで弾いて楽しむ分には何を弾いてもいいと思う。
しかし、人前に出すからには、その曲のエヴァンジェリスト的な要素がついてまわるので、その責任は定番曲以上に大きい。

定番曲なら、アマチュアがどんな演奏をしようと、すでに巨匠たちが名演を残しているのでその定番曲のイメージは聴衆それぞれの中に絶対的に存在している。
それに対して、レア曲は聴衆の中にイメージがまったくないことも多いので、最初に接するその音楽がその曲の楽譜の指示を無視したとんでもないものだったら、誤った印象を与えてしまうのだから・・・)

例えば、ちょっと想像してみてください。一番わかりやすい客観的な指標なのでテンポえお取り上げてみます。

ショパンの「革命」。これは有名ですが・・・もしもこの曲を聴いたことがない人の前で、つっかえまくりノロノロと10分もかけて弾いて(←楽譜の指示は本来なら2分くらい)「これ、素敵な曲でしょう?」と言って「紹介」するのは、もはやショパンや「革命」に対する冒涜としか言いようがないし、ショパンの曲に真摯に向き合っている多くの人達に対して失礼千万な行為だと思う。

だけど、「革命」は古今東西のピアニストが弾いていて、曲のイメージは定着している。だから、アマチュアが(さすがに5倍の遅さの10分はどうかと思うが)3~4分で弾いて「頑張って練習しました!」と言うのは、一般アマチュアの世界では「よく頑張ったね」と(暖かく? 生暖かく?)受容される。


ということで、レア曲というのは、「紹介」的な意味があるなら、十分な技術を持った人でないと人前で弾いてはいけないのではないか?というのが昨今の思いです。
個人的には、そういう人達の演奏でしか聴きたくないというのが本音です。間違った印象をその作曲家や作品に対して持ってしまいたくないので。

結論

レア曲は、そういう趣旨の場で弾くなら、何でもありだと思ってます。
一般的な演奏会などで弾くのは、慎重になったほうがいいのかな?・・・というのが個人的な感覚です。