続・プログラム取り違え「事件」について思うこと

なんでこの件にこんなにこだわっているかといえば、私はもともと「プログラム変更」の不平等条約を撤廃してほしいと思っているからなのです。Twitterでいろいろ情報が集まったこともあり、補足します。

主催者の(返金)対応への疑問

主催者から発表された対応内容をまとめると、こうなります。

主催者の発表によると、セット券でも、各日分を単券で購入した人でも、とにかく、6/3、6/4の両方のチケットを買った人に対しては、6/3分を返金するということです。

そりゃ、まったく同じプログラムを2日続けて・・・というのは、お財布に余裕のある人なら買うかもしれないけれど、普通はあまりそういう購買行動はしない。だから、返金に応じるというものだと考えます。

だけど、実際には、この人たちは後期プロが聴けて満足なわけだし、初期プロが聴けたなかったことについては返金してもらえばまぁ納得の範囲だと思う。場合によっては、後期プロを二日連続で聴けて大喜びな人たちもいるだろうし、そういう人たちは返金請求しないことも考えられる。

まぁ、何にせよ、2日分買ったひとについては、それなりに納得できる対応だと思う。

だけど、問題なのは、6/3分のみを購入していた人たちへの対応です。

6/3のチケット購入者には、2パターンあります。

上記表中③の人たちは、本来は6/4のみを購入したかったけれど、早期に完売したので、バレンボイムの演奏が聴ければいいか・・・と、6/3のチケットを妥協して買ったので、今回の「事件」は予定外に本来希望していたプログラムを聴けて大満足なのです。

しかし、④の人たちは、初期プログラムを聴きたくて、6/3を選んで購入しています。この人たちにとって、今回の「事件」は、いきなりの予告なしでのプログラム変更です。聴きたかった曲は1曲も演奏されることがありませんでした。今回の件で、一番残念な思いをしている人たちだと思います。

ところが、その、一番救済されるべき④の人たちへの返金対応がないのです。

なぜでしょう? そう、主催者サイドに一方的に有利な「プログラム変更」の不平等条項があるからです。チラシに「プログラム変更の可能性があります」と書いておきさえすれば、プログラム変更が理由での返金要求には応じないとするものです。

主催者が④を返金対象としないのは、おそらくこの条項をたてにとっているからです。(違うのだったら、他にどんな根拠があるというのでしょう?)

プログラム決定の謎

主催者のサイトで、5/14に2件のニュースが出ています。

追加公演(6/2東京)と、曲目変更(6/9名古屋)の件です。

これを見てわかるのは、この直前のタイミングで、主催者サイドと巨匠サイドは今回のリサイタルについての調整をしているということです。まさか、テレパシーで意思疎通したわけではなく、何らかの形で打ち合わせが行われているはずです。

その結果を受けて、主催者が発表しているのです。

名古屋の全曲変更というのもなかなか大胆なことですが、開催当日の約3週間前での発表だし、既にチケットを購入している人にとっては、(当初予定の後期プログラムを聴きたかった人には残念かもしれませんが)予めそのつもりでホールに行くことができます。曲目変更の理由が詳細に説明されるのかはわからないですが・・・。そして、このお知らせ以降にチケットを購入する人は変更後のプログラムという前提で購入するので何も問題はありません。(とはいえ、巨匠ファースト、聴衆二の次というのは否めませんが・・・)

名古屋に関しては(本来、プログラム変更はないにこしたことはないですが)、主催者サイドも一応きちんと対応されていると思います。

このタイミングでの巨匠側との調整で、東京の追加公演の話(プログラムも含め)、東京の6/3,6/4の件はまったく話にも出なかったのでしょうか。普通の感覚なら、「6/2は後期、6/3は第1夜の初期、6/4は第2夜の後期ですね」くらいの確認はしているのかな・・・と思いますが、その確認はされていたのでしょうか?

確認していないのなら、明らかに主催者サイドのミスだし、確認しているのなら、なんでこんな事態になったのか謎でしかないです。

5月中旬時点で、大阪、名古屋を含めた、全行程(といっても、わずか5日)のプログラムは「確定」していたのではないでしょうか。

ひとつの仮説

もうひとつ注目すべき「お知らせ」があります。

この中で注目したいのはこの一文です。

「・6月7日の大阪公演は、収容率50%に達し次第、予告なくチケットの販売を終了する場合がございます。」

5/31時点で、大阪はまだ50%未満の販売数で、さらにいえば、6/6夜まで「当日引き換え券」という形で販売継続していました。5/14時点なら、もっと販売数が少なかったはずです。

当初の公演予定と5/14時点での販売状況

 6/3 東京(初期1~4) 完売

 6/4 東京(後期)   完売

 6/7 大阪(後期)   50%未満の売れ行き

 6/9 名古屋(後期)

5/14時点の公演予定とその後の販売状況

 6/2 東京(後期)  追加販売 →関係者席開放・完売

 6/3 東京(初期1~4)完売 →関係者席開放・完売

 6/4 東京(後期)  完売 →関係者席開放・完売

 6/7 大阪(後期)  50%未満の売れ行き(6/6まで販売継続)

 6/9 名古屋(初期9~12) 50%以上の売れ行き?
 →5/31販売停止

このように書き出してみると、この5/14時点の変更によって、明らかに巨匠の負担が増えています。プログラムを2種類から3種類に増やし(すべて違う曲ですから、7曲→11曲に、一気に増えています) おそらく、この変更に伴い巨匠のギャラは増えていて、6/2の東京追加公演は、その追加ギャラ捻出のために追加設定されたものと思われます。

当初の予定なら、最初に6/3に初期1~4を弾いたあとは、後期を東京、大阪、名古屋で順に弾くだけだったのが、なんだか不自然な並びです。やはり、どう考えても、今回のメインは後期3曲だったはずで、東京だけ前夜祭的に初期を組み入れたと思うのです。それが「第1夜、第2夜」という売り方になったのだと思うのです。

それが、なんでこんな並びになるのだろう?

ここで、本当に、仮説ですけれど・・・

もしかして、大阪の販売状況が悪すぎるために、名古屋の後期プログラムを取りやめ、名古屋圏で後期を聴きたい人を大阪に誘導するための名古屋プログラム変更?とか勘ぐってしまうのです。名古屋で後期が聴きたいと思えば、大阪もしくは東京の追加公演のチケットを追加購入することになります。名古屋からだと大阪のほうが近いですね。東京は何もしなくても完売になるでしょうから。

名古屋のプログラム変更は本当に巨匠のたっての希望だったのかしら?と・・・。

今回の会場キャパは

 東京  サントリーホール   : 2006席
 名古屋 愛知県芸術劇場    : 2500席
 大阪  フェスティバルホール : 2700席

です。

企画段階でどれほどの集客を見込んでいたかはわかりませんが、大阪が予想外に販売苦戦しているのだろうなという気はします。

あと、こういうチケット代が高いコンサートは、安い席から売れていきます。なので、大阪の状況は、安い席ばかり売れて、高い席がほんとに苦戦してるのではないかと想像できるわけです。

で、追加公演の日程ですが・・・特注楽器を帯同する都合上、6/3,6/4のサントリーホールを軸に考えると、その前後日程しかないわけで、6/5にサントリーホールは別件の公演スケジュールが入っているので、そこには設定できない。すると、6/2になるわけですが・・・これは、本来ならば、6/3、6/4 のためのリハーサル日程として確保してあったのかもしれません? そうだとすれば、巨匠にとっては、1日リハで使えるはずの予定が本番設定されてしまったことになりませんか?

巨匠と私らへっぽこアマチュアじゃ較べるべくもありませんが、やっぱり、いくら巨匠とはいえ、まったく影響がないとはいえないのではないかという気がします。

そうなるとね・・・いろいろ問題が出てくるものかと。そこでコミュニケーション上の齟齬があったとしても、何ら不思議ではないわけです。

採算性が悪すぎる案件では?

これは昨日Twitter上で知った話ですが、その6/3のプログラム変更について巨匠が終演後に説明したという件、通訳は「その日たまたま会場にいた」通訳さん(←巨匠と面識あるらしい)だそうです。

これを知って、仰天しました。

海外から巨匠を招聘している案件なのに、公演当日に、正式に主催者サイドからアサインされた通訳がいなかったという恐るべき事実です。

通訳を雇う予算もなかったのですか?

<追記>
これについては、当日のスタッフのみなさんは英語はできるので通訳なんて置く必要がなかったという反論(?)もいただいていますが、本当にそうなら、終演後の挨拶の際、客席にいたこの方をひっぱりだすまでもなく、英語に堪能で(だから当日も巨匠と十分にコミュニケーションがとれていたはずの)スタッフがやればよかったのでは?と思います。論理破綻しています。

それで、公演当日、どうやって巨匠とコミュニケーションをとっていたのでしょう? 結局、巨匠とコミュニケーションがとれていなくて、こういう事件に至ったのでは?

当日、無料招待券がばらまかれて、ギョーカイ関係者が多数いらっしゃったことでしょう。おそらくその中に、その通訳さんもいらっしゃったということでしょうから。

正直、そんな無料招待券バラまくより、正規に販売してチケット代を得て、それで通訳さん(だけでなく、必要なスタッフ、備品)をそろえるべきなのでは?という気がします。

人件費だけではありません。

当日会場に行かれた方の話によれば、感染症対策として、入り口で体調不良者のチェックもなく、開演中に咳が止まらない聴衆がいたとか。それにも適切に対応できるスタッフが不在で、聴衆からの申し出によってようやくその咳をする人が退出させられたとか。

もしその咳の人がコロナ感染者だったら・・・。

かけるべきところにお金をかけて運営してほしいものです。

採算性が悪い案件ゆえ、聴衆なんてどうでもいい?

ここで最初にもどります。

バレンボイムの件、巨匠サイドは相応のギャラを得ているでしょうが、主催者はあまり利益がないのでは?という気がしてなりません。だから、6/3 の対応にしても、6/3の単券を購入した人への返金ができないのだと思います。

むしろ、「プログラム変更」の不平等条項を悪用している懸念すらあります。名古屋のプログラム変更も、それに伴う返金対応はないですから。なんだか、ここが非常にダーティです。モヤモヤします。(これ以上は書きませんが、イイタイコトをお察しいただけると嬉しいです)

「プログラム変更」不平等条項の改善

今回のようなことがまかり通ってしまうのは、この「プログラム変更」不平等条項です。もちろん、演奏者のたっての希望でプログラムの「一部」が変更になることはあると思います。しかし、「全面変更」というのは、話が違うのではないでしょうか。

私たち、チケット購入者は、まず、演奏者、曲目、日時、場所を見て、チケット購入するかどうかを決めます。日時、場所が変わることはまずありません。

出演者の一部変わることはありますし、曲目の一部変更もあります。そして、その変更は決まり次第通知されます。何日も(何週間も)前にです。

「プログラム変更」には制限をつけてほしいです。

例えば、

 ・(変更割合の制限)変更する曲目は、演奏時間全体の半分以下であること

 ・(事前告知要件)公演当日の2週間前までに周知されること

 ・(払い戻し条件)上記変更割合、事前告知要件のいずれかに反するものはすべて払い戻し請求できる

みたいな内容に改正されることを切に望みます。

とりあえず、今思ってる最大のことは、これです。プロモーターが絡んでいる公演はもれなく「プログラム変更」不平等条項がついていますが、それは、すべてのリスクをチケット購入者に負担させているのです。聴衆をなめている業界だな~と思います。

チラシに書いたことを守ってください。チケット販売が成立するということは、そのチラシの内容前提での契約が成立したということなのですし。チケット販売側(主催者)は、契約相手(チケット購入者)に対してチラシ内容のコンサートを提供する義務を負うのです。もっとも、チケット販売側(主催者)は、演奏者というもう一方の契約相手もいるのは確かですが、チケット販売が成立した以上は、演奏者の言いなりになるのではなく、演奏者にチラシ通りの内容を遂行するようにマネジメントするのがお仕事だと思うのです。

それをせずに(故意か偶然かは関係ないです)、チラシの内容が提供できなかったなら、チケット購入者には返金対応すべきです。

主催者が演奏者を(たとえ巨匠であろうと)マネジメントしそこなったツケを、チケット購入者に負わせて当然、という悪慣習が撤廃されることを望んでおります。

私はいいです。もはやそういう悪慣習にはうんざりしているので。
まずチラシをみて「プログラム変更」の文字がないものしか行きません。あるいは、プロモーターのチラシなので無条件に「プログラム変更」の文字が入ってきてはいるけれど、過去、極端なプログラム変更をやったことがない(すくなくとも知る限りで)演奏者のしか行かないですから。

こういう人が増えると、コンサート業者さんも淘汰されていくのではないかと思います。それはそれで、良いことかと思っています。