プログラム取り違え「事件」について思うこと

最初に書いておきますが、私は今回のチケットを買っていません。第三者の立場から思うことを書きます。

ダニエル・バレンボイム@サントリーホール

5年ぶりの来日ということで、東京公演のチケットはあっというまに完売。

オール・ベートーヴェン・プログラム
【第1夜 最初のソナタ】 6/3公演
ピアノ・ソナタ第1番 Op.2-1
ピアノ・ソナタ第2番 Op.2-2
ピアノ・ソナタ第3番 Op.2-3
ピアノ・ソナタ第4番 Op.7

【第2夜 後期三大ソナタ】6/4公演
ピアノ・ソナタ第30番 Op.109
ピアノ・ソナタ第31番 Op.110
ピアノ・ソナタ第32番 Op.111

ちなみに、チケット料金は

 S席:¥22,000
 A席:¥18,000
 B席:¥14,000
 P席:¥10,000

ということでした。

こういうプログラム構成で、いわば、6/3の第1夜と6/4の第2夜がセットでひとつのプログラムです。もちろん、チケットは2日間セット券という売り方もされていましたし、各日ごとの単券も販売されていました。

そして、「事件」は起こりました。

「第1夜」、バレンボイムさんは後期ソナタを弾いてしまいました。

そして、主催者からは・・・

これ、どういうことでしょう?

「プログラム変更が起きました」

言葉狩りをする気はないですが、「起きました」って、まるで「地震が起きました」「洪水が起こりました」みたいに受け取れてしまいます。そういうつもりじゃなくこの文面になったのかもしれませんが、だとしたらお詫びの文章としては不適切です。

コンサートを企画して、チケット販売をし、対価を得ている以上、責任をもってそのコンサートを企画遂行する責任があります。「第1夜、第2夜」としての企画をしている以上、第1夜に第2夜のプログラムで実施するというのはあってはならないことです。

この主催者が、どこまで責任をもってコンサートをマネジメントしていたのでしょうか?

伝達ミスだった、という説明があるようですが・・・仮にそうだとしても、未然に防げるはずなのです。

リハーサルさえ実施していれば!

この日、リハーサルは行われていたのでしょうか? 

リハーサルが行われていたとすれば、そこでバレンボイム氏は何を弾いていたのでしょうか? リハーサルで初期ソナタを弾いていながら(←少なくとも初期ソナタのことは意識にあるわけでしょう?)、本番では「伝達ミスで」後期ソナタを弾くなんてことはありえないです。

 (もっとも、リハーサルでその日のプログラム以外の曲を弾くこともあるらしいです)

リハーサルで後期ソナタやその他の曲を弾いていたら、調律師やその場にいた人たちが「今日は初期プロだよね?」と声をかけるだろうし、「巨匠の第1番、楽しみにしてます」とかやんわり声かけすれば、そこで「伝達ミス」が発覚していたはずなのです。

ということで、この日、リハーサルが行われていれば未然に防げたはずのことが、防げなかった。

リハーサルは行われていなかったとほぼ確実に言えるのではないでしょうか。

プログラムの確認もしない、リハーサルもしない、ぶっつけ本番のコンサートだったのでは。

不平等条約的なあれ

そして、今回の主催者の対応として、「2公演セット券」を購入した人にのみ、「第1夜分」を返金という。(あとから、第1夜、第2夜それぞれ単券で両方買った人も、主催者に連絡すれば対応されるような記述が追加されましたが)

では、第1夜のみを購入したひとには? 初期プログラムを楽しみにこの日のチケットを選んで購入した人もいます。それについては、対応なし?

卑近な例ですが・・・

うどんと蕎麦が両方載っているメニューをみて、うどんを注文したのに蕎麦が出てきたとき、私たちは普通は「注文したのはうどんのほうです」といって、取り替えてもらうのではないでしょうか。

この主催者の対応は、「うどんと蕎麦を両方頼んだ人に、蕎麦を2つ出すことになって申し訳ないから、1つ分は返金しますね」ってことです。つまり、「うどんと蕎麦のセットはなくなった」ということなのです。

なのに、商品として存在しなくなった「うどん」だけを注文した人には「蕎麦で我慢しといてね」ですむの?

そうなる背景には、ギョーカイの「不平等条約」がある

プロモーターが絡んでいるコンサートのチラシをよく見ると、たいてい「都合により予告なくプログラム変更することがあります」的な文言が書いてあるのです。今回のチラシ にももちろん書いてあります。「演奏曲目が変更になる場合があります」

私が行ったことのあるコンサートでも、曲目変更になることはありましたが、それは何日(何週間)も前に通知されるし、当日配布されるプログラムには曲目変更についての演奏者からの説明が添付されたりしています。なので、聴衆も、変更があることを踏まえて会場に行くし、会場でその説明文書を見て納得するし・・・というのがよくあるケースでは。

しかし、今回のバレンボイム氏の「事件」は、それらとは違う。主催者サイドの落ち度(とはっきり言っていいと思う)で発生した「事件」なのだから。

なのに、第1夜だけ買った人には、その不平等条約を盾に一切返金しないというのはどうなのでしょう?

第1夜だけを買った人は、全員、返金してもらっていいと思う。

あれ? そうなると・・・結局、第1夜の分は、全部払い戻し対象になりますなぁ(爆) 第1夜のチケット買った人は、もっともっと怒っていいと思う。

今回、チケットを買わなかった理由

このコロナ禍以降、いったい何件、中止、延期で払い戻してきたか・・・ということです。自分の「推し」演奏家さんのも何件も中止・延期になりましたし、行くのをやめたのもいくつもあります。

海外から本当に来日できるの?というのがあって、チケットを積極的に取らなかったです。後日、追加公演として6/2分が追加販売されたけれど、それも、途中までは購入手続き進めたけれども、やはり決済まで進めませんでした。

緊急事態宣言(3度目)の1回目の延長(~5/31)の期間中であり、ワクチンもまだ不透明(私自身がいつ接種できるのか時期の目安すらわからない)な状況で、6月初旬の状況がどうなってるのかわからなかったこと。

去年から今年にかけて、中止・延期でなくても、自主的に「行くのをやめた」コンサートもいくつもあって、そういうのはもうしんどいな・・・と。仮に、来日して、コンサートが開催されたとして、自分は行くのかな? 仮に行ったとしても、楽しめるのかな?といろんな不安要素がありましたから。

まだ当分コロナは続きそうだし、自分なりの判断基準でチケットを買うコンサートを決めようと思います。今回の件で、その判断基準のひとつに「主催者はどこ?」というのも加えておこうと思いました。曲目、演奏者、日時、場所、・・・それよりも何よりも「主催者」が大事だな、ということです。

今回の主催者の対応には不信感しかありませんが、今回の事件のお詫びに、バレンボイム氏はまた来日してくれるそうですから、その時はまともな主催者がついてくれるといいなぁと思うのでした。(もちろん、今回の主催者がもっと責任をもった対応をされるように変わっていただけるなら、それも望ましいことではあります)

聴衆ファーストのコンサートになりますように。